1925・4・5~6 イタリア・ヴェネツィア

4・5

~孝吉の日記~

日。曇。San Sebastiano[*サン・セバスティアーノ教会]へ行く。Titian[*ティツィアーノ]一枚とPaolo Veronese[*パオロ・ヴェロネーゼ]が沢山ある。VeroneseはTintoretto[*ティントレット]などとは[*より]数等下のようだ。
午後、Accademia[*アカデミア美術館]附近で水彩をかく。にはか雨来る。

4・6

~孝吉の日記~

月。曇。朝、裏の方の小さいcanal[*運河]の方へ写生に行った。
写真をとってやると云たら小供が沢山やって来るのも面白い。
午後、Accademia di belle arti[*美術アカデミー]の再度の訪問をする。
ここでは何と云てもTintorettoのものが第一だ。力と深さのあるdessin[*デッサン]と宇宙の構成。深刻な空気と光。人体の力と熱と高い精神の活動。熱烈で深くて金色のような深い色調。Titianの外にTintorettoの出た事が有意義な事を感じる。Carpaccio[*カルパッチョ]も美くしくて確かな技巧の持主として大家だけれど、あまりに理智的で空気が普通で自分の心を強くうたない。

4月6日のものとみられる大橋孝吉の写生(紙、水彩、22.9センチ×14.6センチ、個人蔵)

ヴェネツィアの子どもたち(1925年4月6日)=撮影・大橋孝吉

同(同)=同

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