~孝吉の日記~
火。快晴。朝から写真など撮りに歩く。
Ponte Fabricio[*ファブリキウス橋]は古色のある橋だ。Theatre Marcellus[*マルケルス劇場]のruins[*遺跡]も見た。中々かっちりとしたものだった事を想像する。
Cloaca Maxima[*クロアカ・マキシマ]は古い下水跡だ。
とファブリキウス橋(右奥)。中央は中州のティベリーーナ島。-1-1024x660.jpg)
テヴェレ川に架かるアエミリウス橋=手前左=とファブリキウス橋=右奥。中央は中州のティベリーナ島(孝吉がイタリアで買った絵はがきより)
」とも呼ばれる。.jpg)
孝吉がおそらくこの日に撮影したアエミリウス橋。紀元前2世紀に建設され、一部しか残っていないことから「Ponte Rotto(壊れた橋)」とも呼ばれる。
Palazzo Corsini [*コルシーニ宮]のgallery[*美術館]を見る。グレコの二枚[*1]は実によい。天才だと思はしめる。深さと力と生気と、色の美くしさと、味と皆そなへてゐる。
何といふ美くしさだらう。他にNicolas Poussin[*ニコラ・プッサン]の風景が二三、好きなのがあった。
中々深くて大きい。神秘だ。romantiqueな[*ロマン主義の]十七八世紀頃の風景画にもよく見てゐるとよい神秘な世界を持ってゐるものを見出す。Plazzo Doria[*ドーリア・パンフィーリ宮]のgalleryへ馬車を走らす。ここのgalleryは沢山の絵があるが、よいのが少い。Velázquez[*ヴェラスケス]の法王の肖像は大作でよい。なる程、大きな画家だ。
平凡で偉大な画家と云ひたい。
【註】
*1 《羊飼いの礼拝》《キリストの洗礼》とみられる。

カラカラ浴場(孝吉がイタリアで買った絵はがきより)
午後、三人で馬車を走らし、Terme Caracalla[*カラカラ浴場]からVia Appia Antica[*アッピア旧街道]、Catacombe Callisto[サン・カッリストのカタコンベ]、Tomb of Caecilia Metella[*カエキリア・メテッラの墓]、それからAqua Claudia[*クラウディア水道]をはるかに眺めてVia Appia Nuova[新アッピア街道]の方へ行く。快晴で寒風が吹く。Monti Albani[*アルバーノ山地]、Tivoli[*ティヴォリ]の方の山々を眺め広遼として爽快。しかし画に描きたい所はあまりなかった。

アッピア街道。古代ローマでは都市の城壁内に墓を築くことが禁じられたため、城壁外の街道沿いに墓が集まった。(同)

約69キロ離れた地からローマに水を引いたクラウディア水道の遺跡(同)