~孝吉の日記~
土。晴。Quirinale丘[*クイリナーレの丘]の上へ上ってみる。Palazzo Reale[*王宮]がある。Piazza del Quirinale[*クイリナーレ広場]にもobelisc[*オベリスク]と噴水がある。
Palazzo Rospigliosi[*ロスピリオージ宮]のgallery[*美術館]を見に行たが、次の水曜でないと開かないと云ふ。Piazza Colonna[*コロンナ広場]のBanca Credito Italiano[*銀行のクレディト・イタリアーノ]で金を出す。Pantheon[*パンテオン]近くのSanta Maria sopra Minerva[*サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会]へ入る。ミケランゼロのChrist像があるのだが、読経中なのであまり奥へ入らず。Collegio Romano[*コレッジョ・ロマーノ]の三階にあるMuseo Etnografico-Preistorico[*先史民族学博物館]を見る。拓殖博覧会のやうだ。けれど沢山の石器時代の石器や古代の壺などにはよいものが沢山ある。
Piazza Colonna附近のTempio Dogana di Terra[*かつての使途から当時よく「税関」と呼ばれたというアドリアーノ(ハドリアヌス)神殿を指して記した]、それの北側の十一Corinthian columns[*11本のコリント式の列柱]が突立つ所は古代の壮観を語る。
午後、コロシアムで電車を下りてSan Clemente[*サン・クレメンテ聖堂]へ行く。三時から開けると云ふので歩いてArcus(Arch)Dolabellae[*ドラベッラ門]のruins[*遺跡]を通って大円形のSanto Stefano Rotondo[*サント・ステファノ・ロトンド聖堂]へ入ってみやうと思たが入口がわからないのでよす。
Santi Giovanni e Paolo[*サンティ・ジョヴァンニ・エ・パオロ聖堂]へ行く。入ってみるとmodern[*近代]の修築なので金々。がっかりしたが、地下のancient dwelling house[*古代の住居]へ案内してもらって四世紀のよいfrescoesを見る。Roman[*ローマ帝国]とChrist教との衝突した時代のものだ。中々よいtone[*色調]を残してゐる。若い僧が流暢なフランス語で説明してくれる。そこを出てSan Clementeへ行く。こゝも近代の修築で駄目にしてゐる。中央のapse[*後陣]の壁に[*描かれている]Chirstと十二使徒の立像の画は悪くない。Cappella della Passione[*受難の礼拝堂]にマサチオ(?)のfrescoがある。フロレンスのCarmine寺[*サンタ・マリア・デル・カルミネ教会]のそれのようにはよくないけれど、そのまゝで残てゐるのがうれしい。こゝの地下のexcavation[*発掘]は興味が深い。まずいフランス語で僧が案内してくれる。電光で見る。初期基督教建築のよい標本である。Roman[*古代ローマ]の壁や円柱も残ってゐる。
4th-11th cent.[*世紀]の基督教の壁画が沢山ある。primitive[*素朴]で中々よい。
今日明日に川島さん[*川島理一郎・エイ夫妻]が来るといふので早く宿に帰る。

アドリアーノ(ハドリアヌス)神殿(孝吉が現地で買った絵はがきより)。11本のコリント式の列柱と内陣の壁の一部が遺構として残っている。絵はがきは「Tempio di Nettuno」(ネプチューン神殿)との説明を添えて売られているが、ハドリアヌス帝に後継者のアントニヌス・ピウスが捧げた神殿だった。