1925・5・1~3 パリ

5・1

~孝吉の日記~

金。晴、にはか雨。寒し。今日から広い間に唯一人で居る事になる。部屋の跡始末などで日が過ぎる。

5・2

~孝吉の日記~

土。晴。午前、Cluny[*クリュニー美術館]の庭でスケッチをする。午後、買物。夜、本名氏[*本名文任・蝶]宅をおとなふ。

5・3

~孝吉の日記~

日。チュイレリーの川岸に開かれたSalon(Société des Artistes Français)[*サロン(フランス芸術家協会)]を見る。名前はよいが、日本の帝展のやうなもので、その数の多い事と、よくもつまらないばかりならべた 事には一驚。それからGrand Palais[*1]も見たが、まだ陳列中。あちこち歩いたが、日曜で店が閉って居る。小冊のSemaine à Paris[*2]や新聞Comœdia[*3]などで巴里の美術、演芸方面がわかる。

【註】
*1 グラン・パレ。1900年のパリ万博に際して建てられた大規模な展示施設・美術館で、アール・デコ博でも会場の一つとなった。
*2 『La Semaine à Paris』(ラ・スメーヌ・ア・パリ)。パリの美術、音楽、演劇などの情報を集めた週刊誌。
*3 『コメディア』。フランスの芸術新聞。隔週刊の付録誌として『コメディア・イリュストレ』があった。

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