~孝吉の日記~
雨、後、晴。土曜。朝から一人でLouvre[*ルーブル美術館]へ行く。チチアン[*ティツィアーノ]、チントレット[*ティントレット]のスザンナ[*《水浴のスザンナ》]、レンブラントなどの色彩に見とれる。一般に昔の絵は暗いが深い。近代の画は明るいが浅い。昔も今も太陽の光線は変らない。唯、昔の巨匠は表面の光線を見ずして深い自然を主観の悦びを以って見た。
近代の多くは自然の表面に煩らはされて、それから脱却する力を持たない。伊太利Primitiveの画を見ると一層精神的で、小さな画面に敬虔な自然が広がる。アンゼリコ[*アンジェリコ]、ジオット、等…同代の他の巨匠などの画を見るとRenaissance全盛の天才さへも低く見える。午後、二階の開くのを待て入る。ルイ式[*ルイ王朝様式]の装飾家具、何も心を引かない。
それから三階の絵画を見る。ミレーとドラクロアの十数枚の美くしい力のある自然が自分を引きつける。
午後二時出て、Duvalで晝餐。帰る。
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