~孝吉の日記~
木曜。晴。中々寒い。川島さん[*川島理一郎]が18 Rue de la SorbonneのHôtel Rollin[*オテル・ローラン] へ移るので荷物など手つだう。
大したものではないが、画室付で月に400f。安い。
午後、Panthéon[*パンテオン]見物。名高いChavannes[*シャヴァンヌ]の壁画は全体静かな構図でやはりうまい。装飾として写実派よりもよく建築と調和して居る。建築もローマなどの摸倣ではあるが大きな柱が連立する所、痛快、清じょうである。
おのぼりの団体となって地下のtombeaux[*墓]参拝。ル―ソー[*ジャン=ジャック・ルソー]、ボルテール、ナポレオン三世[*誤り。ナポレオン3世は亡命先の英国に眠る]などの墓がある。
Panthéonを出てBon Marché[*ボン・マルシェ。百貨店]へ行く。中々盛大で大理石とグラスと金色でさん然としてゐる。
全体明るく、まばゆいばかりに美くしいデザインである。
日本のデパートメントストアーにこの建築がほしい。
夜はSt.Michel[*サンミッシェル]のRestaurant Ecoles Réunies[*エコール・レユニ]で晩餐。大学生が沢山来る。日本人、支那人、印度人も多い。
カラス貝[*ムール貝]とあいなめがうまい。
St.Michelを散歩。くらい横町には艶めかしい女があちこちに立ている。
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