1925・4・30 パリ

~孝吉の日記~

木。今日は川島氏夫妻[*川島理一郎・エイ]が日本へ出発せられる。朝から荷物でお忙しい。沢山の荷物は先にGare de Lyon[*パリにあるリヨン駅]に預けられる。
夜九時四十分の汽車で立たれた。岩田氏[*岩田豊雄]のマダム、マリイさん[*マリー・ショウミー]も同行だ。停車場へ送りに行く。
日本を出てから半期の間、兄弟のように親切につきあってくれられた[*ママ]事。その間の楽しい六ヶ月の生活。沢山の事を教はった事。それはげんではつくし難いものだった。日本を立つ時、門司へ上陸して東照宮[*1]で栗など食た事を思ひ出す。別れには思はず涙が出る。あまりに日が早く過ぎたやうだ。

【註】
*1 徳川家康をまつる東照宮は江戸期に全国各地に建てられた。門司に近い小倉にもあったが幕末に破壊されており、何を指すか明らかでない。

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