1925(大正14)・1・12 パリ

~孝吉の日記~

月曜日。朝から霧が深くてうすら寒い。
午後、川島さん[*川島理一郎]Galerie Barbazanges[*バルバザンジュ画廊]へ行く。Utrillo[*ユトリロ]の展覧会である。味のある地味な落着いたで、よい感じの展覧会である。中々うまいと思た。それからRue La Boétie[*ラ・ボエシ通り]の画商を見て歩く。
ある店の窓でRenoir[*ルノワール]の素描に赤い色彩のよい作を見る。又Rosenberg[*ローゼンベール画廊]でマチス、ブラック、ピカソなどに感心する。Galerie Druet[*ドリュエ画廊]で或る女流作家の展覧会を見る。ロートの弟子らしく、ロートそっくりなのには閉口。つまらない。二階にドニやゲランの作があったが、つまらないと思った。崇高、深刻、自然への肉迫が足りないと思ふ。

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