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1924(大正13)・12・12 紅海
未分類~孝吉の日記~晴。 -
1924(大正13)・12・11 紅海
未分類~孝吉の日記~晴。朝より関根船長の室で雲と海の油[*油絵]を習作す。龍巻が起たと云ふので後甲板へ行けばもう消へた後だったので残念だった。尚、陸地見へず、紅海の広いのを感ず。海波静まりて油の如くなり。夜、十五夜の名月なり。波と大空、斯くも神秘雄大なる景色は他になし。身、他界にある如く天国を行く。ホーマーもキリストも、ゲーテも眺めた月を今、紅海に見る。痛快なり。唯素晴らしい大空とより云ふ事が出来ない。甲板に長倚子取り出して夢心地して眠る。 -
1924(大正13)・12・10 紅海
未分類~孝吉の日記~夜より風あり。朝、風浪高く、砕け散る波頭、山のやうな大浪のうねりは南西より来りて船の左舷に押よせる。壮観なり。追手なる故、大しては船揺れず。右手の方に珍奇なる小島四、五を見る。例に依て船長室へ行て遊ぶ。川島氏、頻に描く。午後、水泳す。西の水平線下に真赤の太陽が落ちると、十五夜の名月は明るく銀波に砕く。国を遠く離れて行くを思へば夢幻の境を行く如し。水平線下にアラビアの砂漠を想像して感慨無量なり。後甲板にて小concert開かる。小供など歌ふ。あまり面白からず。船は絶へ... -
1924(大正13)・12・9 アデン湾―紅海
未分類~孝吉の日記~今日は神戸出帆より一ケ月を過ぎぬ。印象は多く永きやうなれど、又、夢の如く毎日雲と波とを見て過ぎ去りぬ。快晴。午後二時頃、Aden沖通過。突□□荒寥たる岬を見る。雄大殺風なる。遠く来たりしを覚ゆ。夕、水泳す。夜八時、姉妹船の榛名丸と行き違ふ。Barで花遊びに加はる。川島氏優勝す。月明白く波頭を輝して、船、波上をすべり行く。追手。十時頃、紅海に入る。 -
1924(大正13)・12・8 アデン湾
未分類~孝吉の日記~紅海八日 快晴。未明、ソコトラ嶋、南方に見ゆ。船Aden Gulfに入るも両岸見えず。唯大洋と変る事なし。涼し。夜、月明るく波にあり。 -
1924(大正13)・12・7 インド洋
未分類~孝吉の日記~晴。白雲ちぎれて飛ぶ。船長に墨で山の画[*マスト]にかゝる。涼し。 -
1924(大正13)・12・6 インド洋
未分類~孝吉の日記~快晴。船長に日本橋芸妓の肖像画を描かされ閉口、失敗。川島氏の応援で難をぬける。夜、船員の相撲。緊張す。 -
1924(大正13)・12・5 インド洋
未分類~孝吉の日記~午後、雨あり。朝、海豚(イルカ)の群、舷をかすめて現る。夕より後甲板に乗組員の相撲がはじまる。散髪屋さんの行事、面白し。 -
1924(大正13)・12・4 インド洋
未分類~孝吉の日記~晴。南に珊瑚礁の島見ゆ。夜、三日月あり。海、殊に静かなり。午後水泳す。 -
1924(大正13)・12・3 コロンボ出港
未分類~孝吉の日記~午前五時、船、コロンボ港出帆。魚しきりに飛ぶ。波美くし。午後二時、北野丸と行違ふ。船員歓呼す。行過ぎる一瞬間さすがになつかし。水泳す。