1925・3・31 イタリア・フィレンツェ-ボローニャ

~孝吉の日記~

火。快晴。早朝、柏村[*柏村次郎]をお隣のHotel Grande Bretagneに訪ねる。後、午前十時発、Firenzeを立つ。Pistoia[*ピストイア]あたりからBologna[*ボローニャ]まで、山又山で広い山の原を見晴し、川の流に沿うたりして風景がよい。切り立たやうな山もそびえる。女が赤いきれを頭にかぶって洗物などする。春ののどかさだ。
Bologna
一時二十分、Bologna着。hotel busでHotel Stella d’Italiaに宿す。早速出てMuseo Civico[*今の市立考古学博物館]へ行く。
antique[*古代美術]のよいcollectionである。Egyptのstatues[*彫像]、relief[*レリーフ]、Greek base[*壺]、Etruriaの石のreliefsなどやはり皆落ちがなく[*揃って]美くしい。
この町で一番大きなSan Petronio寺[*サン・ペトロニオ聖堂]を見る。十五世紀のfrescoesやstained glass[*ステンドグラス]などがあるが大したものでない。S.Domenico[*サン・ドメニコ聖堂]へ行く。外面は赤れんがでよい感じである。内部は全く近代でつまらない。ピサノ[*ニッコロ・ピサーノ]のreliefsの棺に、Michelangelo作アンゼル[*彫刻《天使》]、Lippi[*フィリッピーノ・リッピ]など。大したものでない。夕暮、町を歩いてhotelの向ひのbarbiere[*床屋]へ行く。夜、散歩する。店は皆閉められて、caffè[*喫茶店]ばかりが開いてゐる。夜明の町を男女が歩いてゐるやうで面白くない。

ボローニャにあるサンティ・バルトロメオ教会の柱廊(孝吉がイタリアで買った絵はがきより)。ボローニャの街は歩道の上にアーケードのように張り巡らされる柱廊と、多くの塔が特色をなす。中世には塔が林立していたとされ、今なお約20の塔が残る。

ズッキーニ宮の柱廊。装飾をまとう。(同)

サンタ・マリア・デイ・セルヴィ聖堂と、正面の広場を囲む柱廊(同)

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