1924(大正13)・12・30 パリ

~孝吉の日記~

火曜日。雨。朝よりMusée de Cluny[*クリュニー美術館]を見る。十三世紀頃より十八世紀の間の中世の物ばかりである。室が陰気で基督芸術の煩雑、暗陰さがおそう。EgyptやAssyriaなどの明快な力強さ、偉大なる芸術に比して数段、頽廃はまぬかれない。しかし、さすがは古代の芸術で大きいところはある。中にも十三四世紀の石彫建築の装飾など我藤原朝の石仏を思ひ出さしめ又Roman Antique[*ローマの古代美術]精神も存して偉大であった。Muséeの庭にもgothic[*ゴシック様式]の石彫の破片や、破れたarchが置かれて古色を帯びてゐるのがうれしい。
中世は自分にとってはあまり好ましい時代ではない。しかし古代より近代への連鎖としてなくてはならない時代であった。
午後、天気が悪いのででず。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次