~孝吉の日記~
快晴。月曜日。朝からLloyds and National Bankへ行く。帰りOpéraから歩く。種々の店をのぞいて、セイヌ川端のBon Marché[ボン・マルシェ。百貨店]をあさって帰る。午、皆でデパートメントのPrintemps[*プランタン。百貨店]へ行く。雑とうでやっとの事で中に入る。電光まばゆく、printemps[*春]の名にふさわしい。すべてのdecorationが明く美くしい。上から下まで一通見て外に出る。
夜、川島氏夫妻[*川島理一郎・エイ]、岩田氏[*岩田豊雄]に同行して、現代フランスの一流脚本家、美術批評家のVildracさん[*Charles Vildrac。シャルル・ヴィルドラック]のお家へよせてもらう。一家皆愛想よくもてなされるのはうれしかった。壁には沢山の現代画がかけられて大なる展覧会のやうである。中にもルノアールの二点、フリエース、マイヨール彫刻など、この位のよい出来は日本へは来ない。外にマチス、ブラマンク、カモアン、オットマン、マルケなど出来のよいのが多かった。
美術複製など取り出されて伊太利の話を聞く。
十一時半、別れて帰る。
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