1924(大正13)・12・11 紅海

~孝吉の日記~

晴。朝より関根船長の室で雲と海の油[*油絵]を習作す。龍巻が起たと云ふので後甲板へ行けばもう消へた後だったので残念だった。
尚、陸地見へず、紅海の広いのを感ず。
海波静まりて油の如くなり。夜、十五夜の名月なり。波と大空、くも神秘雄大なる景色は他になし。身、他界にある如く天国を行く。
ホーマーもキリストも、ゲーテも眺めた月を今、紅海に見る。痛快なり。唯素晴らしい大空とより云ふ事が出来ない。甲板に長倚子取り出して夢心地して眠る。

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