4・13
~孝吉の日記~
Saint-Cloud[*サン=クルー]
月。快晴。復活祭で郵便局も銀行も駄目。あてがはずれたので午後、郊外のSaint-Cloudへ行く。Châtelet[*シャトレ]から川汽船で行く。遊びに行く男女多くてづゞ[*数珠]つなぎになって待たされる。
やっと四五廻目の汽船に乗る。一人2frs10、は安い。
沢山のSeine[*セーヌ川]にかけられた立派な橋の下を過ぎて走る。両岸の景色が変化して美くしい。
春風嫋々[*そよそよ]として来り爽快。
Saint-Cloudの新緑の美くしい公園を散歩。
日本にもほしいやうな、のどかな歓楽境が現出する。
帰りはSaint-Sulpice[*サン=シュルピス]迠、電車で帰る。
Sèvres[*セーヴル]、 St. Cloud[*サン=クルー]、Meudon[*ムードン]の郊外は画のやうな所が多い。現代の油絵の材料だ。
4・14
~孝吉の日記~
火曜。曇。川島さん[*川島理一郎]に来てもらってposte[*郵便局]とdouane[*税関]へRomaよりの小包をとりに行たが、あまりおそいので送りかへしたといふ。午後、岩田[*岩田豊雄]、本名[*本名文任]氏が見へる。
夜は手紙などかいて過ぎる。