1925・3・15 ローマ

~孝吉の日記~

日。晴。朝、Museo Laterano[*ラテラノ美術館]へ行たが閉ってゐる。近くのS.Croceの寺[*サンタ・クローチェ・イン・ジェルザレンメ聖堂]へ入ってみたが、何もよいものがない。
それからSan Lorenzo[*サン・ロレンツォ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂]へ行く。facade[*建物前面の外観]が一寸面白く、frescosの残りがよい色のニュアンスを見せる。そう古いものではないが、portico[*柱廊玄関]にもfrescoがある。中は新らしく建てられてよくない。廿二本のantique columns[*古代の柱]がある。facadeをパステルでスケッチする。cemetery[*墓地]も見た。こちらの墓場は華やかなものだ。
午後、Capitol[*カピトリーノの丘]近くのSanta Maria in Aracoeli[*サンタ・マリタ・イン・アラチェリ聖堂]へ行く。横が入口である。その上に13cent.のmosaicがある。中部の右の第一番のchapelにPinturicchio[*ピントゥリッキオ]のfrescosがある。その他は新らしくて金々沢山なのには閉口。すぐ下のArco Settimio Severo[*セプティミウス・セウェルスの凱旋門]の近くにCarcer Mamertinus[*マメルティヌスの牢獄]。昔のprison[*監獄]である。中へ入ったが、たゞ真闇まっくら土窟どくつで要を得ない。
Forum[*フォルム・ロマヌム]でスケッチでもしやうと行てみると、写生は許可がないと出来ないと云ふ。んだ、つまらない、とすぐ帰る。
後、ミケランゼロの設計したPorta Pia[*ピア門]を見に行く。やはり力のあるよい所がある。羅馬も随分見て一通見るだけは見た。

アラチェリ広場からカピトリーノの丘を望む(孝吉がイタリアで買った絵はがきより)。奥に見える階段を上ると、カンピドリオ広場に面して時計塔のあるローマ市庁舎がある。サンタ・マリア・イン・アラチェリ聖堂は左手の階段の上に立つ。

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