2・23
~孝吉の日記~
月。朝、電車でS.Giovanni in Laterano[*サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラノ大聖堂]へ行く。寺は大きいが内部はよくない。Museo[*ラテラノ美術館]を見る。彫刻とinscriptions[*碑文]ばかりだ。よいものも沢山あるが、それは皆、希臘彫刻と思はれる。Romanのものにしても初期のものだ。随分感心した。二階に大きなTerme Caracalla[*カラカラ浴場]のモザイックがある。中々よい出来だ。こんなものがあるからRomanも捨てられない。立派なものだ。晝食にRistorante Ulpiaへ行かうと思たが見あたらないのでよした。午後、Via Salaria[*サラリア通り] 7AのAnderson[*1]へ行く。
【註】
*1 写真会社「アンダーソン」。イタリア文化省などによると、創業者は英国生まれで、フランスで絵画を学んだアイザック・アトキンソン(1813~77)。ローマに定住して「ジェームズ・アンダーソン」と名乗った。創業は、文化省によると1851年で、フィレンツェの老舗写真会社フラテッリ・アリナーリに1年先立つが、孝吉がもらったアンダーソンの広告物には「1854年」とある。絵画や彫刻など美術作品の複製を専門としていたが、古代遺跡や風景の写真も手掛けた。息子のドメニコ(1854~1938)、さらに孫が引き継いだが、1960年に写真原板約4万点をフラテッリ・アリナーリに売却し、事業を終えている。欧州に足を運ぶ機会が少なく、現代のように写真や画像があふれていなかった第2次世界大戦以前には、ローマを訪れた日本の画家たちの多くが複製を持ち帰るために立ち寄った。

1925~26年に孝吉が入手したアンダーソンの広告物。観光客が多く訪れる19施設の入場料や開館日などの一覧が付いており、便利だった。創業を1854年とうたっている。
2・24
~孝吉の日記~
火。雨、時々晴。朝、岩田さん[*岩田豊雄]が巴里へ立たれるので停車場迠送る。自分唯一人となる。よいものが沢山ある、それを見る喜びの為にけされてか、あまり淋しくない。
午後、又、Andersonへ行く。よい写真が沢山あるので、中々見切れない。