1925・2・21 ローマ

~孝吉の日記~

土。雨。馬車でGalleria Borghese[*ボルゲーゼ美術館]へ行く。portico[*柱廊玄関]にantique statue[*古代の彫像]が置いてある。torso[*トルソ。胴体部の彫刻]に二三よいものが見られる。中の彫刻はあまり感心しない。には相当よいものがある。
Titian[*ティツィアーノ]の地の神と愛の神[*《聖愛と俗愛》と呼ばれている作品]、Leonardo school[*レオナルド派(の作)]と云はれてゐるLeda[*《レダと白鳥》]はよい。その他、Botticelliの一枚。
樹木と噴水のある庭園もよい。古風なstatueが立てゐる。午後もよく雨が降る。馬車でMuseo delle Terme[*テルメ博物館]、今のMuseo Nazionale[*国立博物館]へ行く。運転手が入口をよく知らないので、横門でおろされ、ずぶぬれになってやっと表門を探した。見ればThermae Diocletian[*ディオクレティアヌス浴場]の大きなruin[*遺跡]が破れて、しかもがっちりとした胴体を大地によこたへてゐる。そのruinをつくろって裏のchiostro[*回廊]と共に今のMuseoとなってゐる。入口はみすぼらしいMuséeだと思たが、中へ入て見ると堂々とした立派なRoman、Greekの彫刻やantique[*古代遺物]が無数に集められてゐるので、息苦しくなる位の感激を受ける。
最もよいものは大抵Greekのものだが、Romanの物の中にもよいtorsoが沢山見出される。中庭にまで無数の傑作。皆Rodin[*ロダン]の作品よりもうまいと思われるものが雨うたしにしてある。今度伊太利へ来て初めての最も大なる感激である。夕方、町を散歩する。

 〇 Furia dormenie[*《眠れるエリニュス(復讐の女神)》《ルドヴィージのメデューサ》などと呼ばれている] 
 〇 Venere Genitrice[*《母なるヴィーナス》]
 〇 La Fanciulla d’Anzio[*《アンツィオの少女》]
 〇 Torso of Venus[*ヴィーナスのトルソ] 第一の廊
   Torso de Famme [*女のトルソ] Chiostro Grande[*大回廊] 入て右
   Torso de Famme よこたはる。庭

ローマ国立博物館の所蔵品のうち、孝吉が日記で「〇」をつけた《眠れるエリニュス(復讐の女神)》《ルドヴィージのメデューサ》などと呼ばれる作品(孝吉が現地で買った絵はがきから)

やはり「〇」を付けた《母なるヴィーナス》(同)

《アンツィオの少女》(同)

《ヴィーナス》(同)

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