~孝吉の日記~
雨。月曜日。馬車でCasa Buonarroti[*カーサ・ブエナローティ]へ行く。Michelangeloの寝起したという家だ。小さい彫刻少しとdessin[*素描、デッサン]のよいのが沢山ある。デッサンは中々よい。その他は模写などだ。次にBargello[*バルジェッロ](今のMuseo Nazionale[*国立美術館])へ行く。
Donatello[*ドナテッロ]のSt.John[*聖ヨハネ]やその他の作品、ミケランゼロの小さい作品、がある。Donatello 名高い巨匠だが、あまり好きではない。
その他、皿、や武器などがある。奥の、昔はchapel[*礼拝堂]だった一室はGiotto[*ジオット]のフレスコで天井と壁がみたされてゐる。破損がいたましい。ダンテの像もその一部分に見られる。天国と地獄の図だが殆どわからない。唯フレスコのよい色調がさすがよい感じを与える。
午後、Alinariの写真屋[*1]へ行く。
【註】
*1 フラテッリ・アリナーリ社。1852年にアリナーリ3兄弟がフィレンツェに構えた老舗の写真会社。美術品・建築を中心に撮影、写真の販売、出版を手掛けて事業を拡大した。孝吉が訪ねた当時は実用的なカラーフィルムはまだなく、カラー写真は一般的ではなかったが、アリナーリ社は「オートクローム」という写真乾板の技法などを使い、絵画のカラー写真も販売していた。