2025年2月– date –
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1926・2・16 イタリア・フィレンツェ
~孝吉の日記~雨。月曜日。馬車でCasa Buonarroti[*カーサ・ブエナローティ]へ行く。Michelangeloの寝起したという家だ。小さい彫刻少しとdessin[*素描、デッサン]のよいのが沢山ある。デッサンは中々よい。その他は模写などだ。次にBargello[*バルジェッロ](今のMuseo Nazionale[*国立美術館])へ行く。Donatello[*ドナテッロ]のSt.John[*聖ヨハネ]やその他の作品、ミケランゼロの小さい作品、がある。Donatello 名高い巨匠だが、あまり好きではない。その他、皿、や武器などがある。奥の、... -
1925・2・15 イタリア・フィレンツェ、フィエーゾレ
~孝吉の日記~暴風。Orsanmichele[*オルサンミケーレ教会]の中は中々よい。Orcagna[*オルカーニャ]のreliefがある。外面にVerrocchio[*ヴェロッキオ] 、Donatello[*ドナテッロ]、Lor.Ghiberti[*ロレンツォ・ギベルティ]の作品、Christ、St.John[*聖ヨハネ]などの像がある。それからS.Lorenzo[*サン・ロレンツォ教会]へ行く。内部建築は悪くない。例のMedici[*メディチ家]の墓のある堂はMichelangeloの設計でよい。Mediciの像や月と日[*彫刻《夜》と《昼》]もよい。それでも埃及る如く... -
1925・2・14 イタリア・フィレンツェ
~孝吉の日記~朝、Santa Maria del Carmine寺[*サンタ・マリア・デル・カルミネ教会]へ行く。古朴な寺だが、中は後に手をつけたのでさっぱり見られない。名高いMasaccio[*マザッチオ]のfrescoes from the story of the Apostles[*《貢くないが、内容に於て広大、崇高、壁面の古色の美くしさ、超現実の静寂。いくら記してもあの美くしさはAngelico以外のものは表せない。中にも[*でも] L’Annunciazione[*《受胎告知》]36 Cristo appare alla Maddelena [*《我に触るな》]38 La Depo... -
1925・2・13 イタリア・フィレンンツェ
~孝吉の日記~小雨。金曜。窓外にアルノ河を望んで対岸に古い家並と鐘堂を見る。くたびれてゐるので、Florenceのプログラムなどを作って過す。午後、多年心を去らなかったGalleria Uffizi[*ウフィツィ美術館]を見る。Ponte Vecchio[*ヴェッキオ橋]もよい。多くの天才を集めた古Firenzeの花期を思ふ。Uffizi Gallery[*ウフィツィ美術館]は予期にそむかず渡欧以来の感激の大なる一つであった。Palazzo Uffizi[*ウフィツィ宮]の建築、階段、長い立派なcorridor[*回廊。ドーリア式]はさっぱりとした大... -
1925・2・12 イタリア・ヴェネツィア―フィレンツェ
~孝吉の日記~曇。小雨。木曜。汽船でSan MarcoのPiazza[*広場]へ行く。高いCampanile[*鐘楼]に登て海にかこまれた市街を見下す。壮快。それからPalazzo Ducale[*ドゥカーレ宮殿]に入る。ベロネーズはあまり感心しない。Tintoretto[*ティントレット]一人舞台だ。あまり大きくはないが、Minerva respinge Marte[*《マルスを退けるミネルヴァ》]、Fucina di Vulcano[*《ウルカヌスの鍛冶場》]、三人の裸女[*《三美神とメルクリウス》]、などのよい構図、肉体、色彩。さすがTintorettoと思はし... -
1925・2・11 イタリア・ヴェネツィア
~孝吉の日記~曇。水曜。朝から狭い折れ曲がった街を通てAccademia di Belle Arti[*1]へ行く。街はきたなく貧民窟のやうだが、Venezia情緒が豊かで時々細いcanal[*運河]の橋を越へる時、裏窓に水のゆらめく景色は好きだ。建物もさびてよい味を持ってゐる。Accademiaはさすがによいものがある。Paolo Veronese[*パオロ・ヴェロネーゼ]は大作が沢山あるが、思たより浅い。Tintoretto[*ティントレット]のよいものが多い。Adam et Eve[*《誘惑されるアダムとイヴ》]、Cain et Abel[*《カインとアベ... -
1925・2・10 イタリア・ヴェネツィア
~孝吉の日記~火曜。曇。朝、九時四十分Milano発にて立つ。平原を西へと走る。単調だが趣のある風景が迎えて去る。遠いéglise[*教会]の鐘楼と立杉[*糸杉]、畑、田舎家、耕す人、羊、葉の落ちたみき、朝霧に霞む。VeneziaVerona、Vicenza[*ヴィチェンツァ]、Padovaを過ぎてVeneziaに午後三時着。途中はのどかな村だ。Veneziaはお上りの行くところ、きたない所といふ人があるが、そのきたない所に自分は永い歴史と美くしさを見る。停車場からgondolaに乗てユラユラとゆられ両岸のCasa何々[*何々の家]、... -
1925・2・9 イタリア・ミラノ
~孝吉の日記~月曜。快晴。朝から早速Santa Maria delle Grazie[*サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会]へtaxiで行く。Da VinciのLast Supper[*《最後の晩餐》]、それを古びた一面の壁に奥深く見た最初の印象は忘れる事の出来ない喜びだった。多年の憧が今、目の前にあるのだ。破そんされたと人は云ふがやはり美くしくてDa Vinciの人格に接する事が出来る。何といふ美くしい色調か。落ついた静かさ奥深さか。もうこれ以上を書かない。横に美くしいfrescoesを以て装飾されたcloister[*1]がある。あの... -
1925・2・7~8 パリ―車窓のスイス―イタリア・ミラノ
2・7 ~孝吉の日記~伊太利行種々旅行の準備をする。夜九時二十分、expressでGare de Lyon[*パリにあるリヨン駅]出発。同行、岩田豊雄氏。川島さん[*川島理一郎]、柏村さん[*柏村次郎]が送て下さった。Dijon[*ディジョン]を過ぎてSwissの国境にかゝると地には薄雪が積ている。 2・8 ~孝吉の日記~passportをしらべ、荷物は見ずにすむ。だんだん汽車は下りてLausanne[*ローザンヌ]を過ぎる。南にLéman湖が見え、その岸を走る。青くすき透た水面にはさゞなみがうちよせる。向側には大きな岸山が... -
1925・2・1~6 パリ
2・1 ~孝吉の日記~日。岩田さん[*岩田豊雄]と伊太利へ行く事にする。 2・2 ~孝吉の日記~月。伊太利語の本など見て過る。 2・3 ~孝吉の日記~火 2・4 ~孝吉の日記~水 2・5 ~孝吉の日記~木。Thomas Cook[*トーマス・クック。旅行会社]へ行って、Milan、Venice、Florence経Rome迠=88fr)。列車席のreserve[*予約]をする。岩田さんとRome迠一所に行ってRomeで別れ、川島さん[*川島理一郎・エイ]の来るのを待つ事にする。多年憧れて居た美術の伊太利を見る機会が来た事を喜ぶ。 2・...
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