2025年1月– date –
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1925(大正14)・1・3 パリ
~孝吉の日記~雨、後、晴。土曜。朝から一人でLouvre[*ルーヴル美術館]へ行く。チチアン[*ティツィアーノ]、チントレット[*ティントレット]のスザンナ[*《水浴のスザンナ》]、レンブラントなどの色彩に見とれる。一般に昔の絵は暗いが深い。近代の画Primitiveの画を見ると一層精神的で、小さな画面に敬虔な自然が広がる。アンゼリコ[*アンジェリコ]、ジオット、等…同代の他の巨匠などの画を見るとRenaissance全盛の天才さへも低く見える。午後、二階の開くのを待て入る。ルイ式[*ルイ王朝様式]... -
1925(大正14)・1・2 パリ
~孝吉の日記~金曜。雨。風あり。手紙を書く。どこへも行かず。晩餐は食料店でhors-d’œuvre[*オードブル]のサラド、ブール[*フランスの伝統的なパン]、ロチ[*ロティ。ロースト肉]、ソーセージなど買てきて食ふ。中々うまい。 -
1925(大正14)・1・1 パリ
~孝吉の日記~晴。木曜日。人は皆、新たな服を着て、église[*教会]へお参りする人もある。巴里は休日で静かである。しかし自分等は少しも正月元旦のやうな気分がしない。朝から洋服屋へ行って仮縫を着てみる。午後、Louvre[*ルーヴル美術館]へ行く。休日で、ferme aujourd’hui[*本日休館]としてある。し方なしにBoulevard St.Germain[*サンジェルマン大通り]の写真屋でEgypt、Greeceのarchaic[*アルカイック期]などの建築彫刻写真百枚程買ふ。素敵なものばかりなんだ。350F(53円)程になる...